県政オンブズマン地方相談員制度について



『とりあえず感じたこと』

  • 中立性についての疑問

    • 地方公務員法第3条第3項第3号の特別職の非常勤職員とされ、その任期は平成8年11月1日より平成9年3月31日までの5か月間とされ、また手当てを支給される。
    • 制度的には、地方県事務所の監督下にあり、究極的には宮城県知事の指揮監督下に有るものと思われる。
    • このような官設の機関が、真に県民と県政との中立の立場に立てるかどうか疑問がある。私設の市民オンブズマンと比較すると、行政に対する本質的批判の立場と、自らの出費でもって運営している熱意の点と、行政当局により要綱として設置されたという官制の制度的制約の点とで、欠点を内包していることは否定できないように思われる。

  • 公開性についての疑問

    • 職務上知り得た秘密については、これを漏らしてはならないとされ、その職を退いた後も同様であるとされている。個人のプライバシーを保護するものであって、相談や苦情の開陳をした者が、強力な行政組織や口うるさい地域社会から、不当な差別をうけ社会生活上の利益を侵害されることのないように図られている。
    • その一方で制度の実効については、県政オンブズマンによる勧告や意見表明等の内容を公表することにより担保力を確保すると説明する。
    • しかし、具体的な事案を公開せずにどれほどの実効が確保できるか疑問がある。 優秀な官僚は抽象的な責問に対しては、巧妙な言い訳を用意して責任を回避するであろう。その言い訳を看破するには、その分野における深い知識と素養が必要であろう。きわめて単純な言い訳であってもそれに反論するには莫大なエネルギーを要するものである。

  • 特に地方相談員の機能上の限界についての疑問

    • 県政オンブズマンの定数は2名であって、仙台を除く各地方県事務所にはその補佐として地方相談員がおかれる。そして地方相談員を補助する職員は置かれないようである。
    • 応接日が地方では週1回と限定されており、時間も限られ、しかも相談室を離れられない。気仙沼の例では、毎週火曜日9時から午後4時までフルタイム応接せねばならなく、調査や事務処理のための専念できる時間がない。
    • 以上からも明白であるように、自らの手と足とで実状を調査することは、人員的観点からみても予算的観点からみても、時間的観点からみても不可能である。そこで制度の上でも実状調査は不要であって、単に虚偽であるかどうかを確認するだけで、県政オンブズマンに送付することとされているのである。調査権が事実上認められなければ、地方相談員の機能は大きい制約下に有ることになり、そのしわ寄せは中央の2名の県政オンブズマンに掛かっていくことになろう。地域の複雑な利害の絡み合いが予想され、県政と県民の思惑が交錯することが予想される事案に対して、どれほどの解決力を発揮できるであろうか。

  • 範囲についての疑問

    • 県政に関するものに限って苦情を受け付け、それ以外のものはその管轄機関を紹介することは当然であるが、1年以内の苦情であってしかも自己の利害にかかわるものに限られるのは、申立ての範囲を限定しすぎているのではないかという疑問もある。
    • 自己の利害としての要件は、法的に厳密に解釈すべきではなく、県民の生活上の利害にかかわることであれば良いものとして、広く解釈して運用していくべきであろう。 更に1年以内の苦情との要件も、事実発生の日から1年を経過したからと切り捨てるのではなく、不利益が経過して現在に至っているので有れば現在の苦情として処理できるであろうし、やむを得ない事情により1年が経過したときなども、遅れたことに本人の責任がないのであるから申立てを認められると考える。